vol.25 ぼんじゅーる農園
蓑輪 康さん

日本の食事にふさわしい
「日本のワイン」を作りたい

vol.25 ぼんじゅーる農園<br>蓑輪 康さん<br><br>日本の食事にふさわしい<br>「日本のワイン」を作りたい

ピノ・ノワールに特化して
質の高いワインを

2014年3月、ぼんじゅーる農園の「ア・エ・イグレック 鞍掛ルージュ ピノ・ノワール2013」が発売されました。同園で栽培されたピノ・ノワールを同じ東御市内のワイナリー、リュードヴァンで委託醸造したものです。過去にも2度委託醸造した経験がありますが、販売するのは今回が初めて。事実上のファースト ヴィンテージであり、生産本数は1247本。ぼんじゅーる農園では通信販売を行っています。

「木がまだ若いためか、ワインに力強さはありませんが、サクランボやイチジクの香りが感じられ、ピノ・ノワールらしい軽やかで優しいタイプのワインに仕上がりました」と、農園主の蓑輪康さんはにこやか。

このピノ・ノワール畑は東御市北部の鞍掛地区にあり、千曲川北岸の南向き斜面、標高740~800メートルに点在します。面積は0.55ヘクタールです。加えて、昨年から祢津地区にも畑を拡張してピノ・ノワールを植えました。同園の総面積は1.36ヘクタール。日当たりと水はけに恵まれ、ワインぶどう栽培に適した土壌です。

「日本の食事に合わせやすいのは、ピノです。自分が飲みたいから、ピノを主力につくっています」

蓑輪さんはブルゴーニュのワイン、とくにピノ・ノワールとシャルドネが好み。ピノ・ノワールは、赤ワイン系のなかでもカベルネやメルローより軽く、日本の食事に合わせやすいといいます。また、ピノ・ノワールに品種を絞ることで、農場の人手はほぼ夫婦だけでも効率的に質の高いぶどうを栽培することができます。

シニアソムリエの成澤篤人さんは「まだ若い木とはいえ、ピノ・ノワールの品質としては県内でも高い水準。コストパフォーマンスもいい」と評価しています。

東御市の畑のピノ・ノワール。ピノ・ノワールの栽培は、7年目に入った
30種近い品種を試験栽培中。「この地の土壌や気候と相性がよく、よいワインが期待できそうな品種があればチャレンジしていくことも考えています」

玉村豊男さん、蓮見さんに憧れて
東御市で農園主となる

蓑輪さんは神奈川県出身。20代後半でワインに目覚め、さまざま飲み比べているうちに、自分でもつくってみたくなったといいます。東御市にヴィラデストワイナリーを開いた玉村豊男さんの著書に影響を受け、さらに同じ東御市にはすみふぁーむ&ワイナリーを設けた蓮見よしあきさんのメルマガやブログを愛読。ともに非農家出身で、ゼロからぶどうを育て、ワイナリーを開業し、さらに自社だけでなく地域や県産ワインの振興に尽くそうとしている先達です。

「農園を持つにあたり小諸や佐久も検討しましたが、東御市がより私の理想に近い場所でした」

畑に掲げているロゴマークは、蓑輪さん自身が「ぼんじゅーる農園」の「ぼん」をデザインしたもの

2008年に佐久市でぼんじゅーる農園を始め、2010年に憧れの東御市に畑を持つことができました。「雑草も少なめの痩せた土地です。だからこそ、ぶどうがしっかりと根を張り巡らせてくれます。年々、実のつきが良くなっているのがうれしい」

蓑輪さんのぶどう栽培に師匠はなく、ほとんど独学。これはと思う畑を季節ごとに見にいって、学んでくるのだとか。とくにブルゴーニュでは、定点観測のように訪れているぶどう園もあります。

ブルゴーニュにあるような
小さなドメーヌを目指して

ぼんじゅーる農園は夫婦ふたりで始めた農園です。ワインのブランド名「ア・エ・イグレック(a. et y.)」は、ふたりの頭文字をとったもの。しかもワインのラベルには、よく見ると大きな赤いハートが隠れています。

3~5年後には、ワイナリーの設立を目指す蓑輪さん。「ブルゴーニュのドメーヌのような」小さなワイナリーが目標です。ドメーヌとは、自らぶどう畑を持ち、栽培・醸造・ビン詰を一貫して行うワイン生産者のことです。将来、人を雇うとしても、営業や販売を含め、じっくり取り組める規模にしたいといいます。

ア・エ・イグレック 鞍掛ルージュ ピノ・ノワール2013

実は蓑輪さんは医師免許を持ち、今も医療にも関わっています。当然、働き手として奥様にも負担が掛かりますが「私のワインへの思いをよくわかってくれていますから」

晴れた日には二人とも畑に出て、農作業に精を出します。夜には奥様の手料理とワインで晩酌、ときにはぶどう畑で弁当を広げて週末ランチにすることも。信州での暮らしを楽しみながら、農作業を協力して行い、ぶどうが育つのを見守っています。

ブルゴーニュのドメーヌにならい、バラが植え込まれたぼんじゅーる農園。蓑輪さん自らがデザインした農園のロゴマークが、ほのぼのとした空気を醸し出しています。

可憐に咲くぼんじゅーる農園のバラ
※この記事は、2014年9月の内容です。ただいま、ぼんじゅーる農園ではワイナリー設立に向けてファンクラブを設立し、会員募集中です。詳細はぼんじゅーる農園公式サイトより、ご確認下さい。
(取材・文/平尾朋子  写真/平松マキ)

蓑輪 康

みのわ やすし

1969年生まれ、神奈川県厚木市出身。医学部を卒業したのち、医師として勤務。2004年、 欧州種ぶどうの栽培を始める。ぶどうの挿し木、接ぎ木、取り木、鉢植え栽培の技術を習得。2008年に佐久市でぼんじゅーる農園を開園し、ピノ・ノワールを専門に栽培する。2010年に東御市にぶどう畑を広げ、翌年、ぶどう樹を移植して東御市に完全移転。2013年、通信販売酒類小売業免許取得。2014年3月に事実上の初ヴィンテージをリリース。

ぼんじゅーる農園

ぼんじゅーるのうえん

所在地 長野県東御市新張978-1 (ワイナリーはないので訪問はお控えください)
TEL   0268-63-4144
URL  ぼんじゅーる農園

2014年09月25日掲載