ワイナリーへの道を開く 期待のワイン生産アカデミー始動
長野県がNAGANO WINEのブランド化とワイン産業の発展を推進するため、2012年から10年計画でスタートさせた「信州ワインバレー構想」。その施策の一つである、総合講座「ワイン生産アカデミー」のガイダンスが5月25日、長野市のアイビースクエアで開催されました。
ワイン生産アカデミーとは、長野県内でワイナリーを開業しようとする新規参入希望者を対象に、農地購入からはじまり栽培、醸造、そして経営など、ワイナリー経営に必要な基礎知識や技術が学べる講座。その説明会となるガイダンスが去る5月25日に行われ、予想をはるかに上回る90名もの参加者が集いました。
長野県でのワイン生産の基礎知識とワインに携わる人の声に耳を傾ける
ワイナリー開業に向けて参加者の熱気に満ちた空気の中「ワイン生産アカデミー」についての説明、ワイン用ぶどう栽培技術のこと、また、長野県の地勢・気候の特徴、適地の見極めの重要性などについて説明が行われたほか、長野県原産地呼称管理委員会の会長でおいしい信州ふーど(風土)大使を努め、自らもヴィラデストワイナリーを経営する玉村豊男さんと、フード&ワインジャーナリストの鹿取みゆきさんの講演も行われました。
玉村豊男さんには「ブドウ畑からワイナリーへ」と題して、1時間におよびワイナリーを立ち上げた時の状況や日本のワインづくりの歴史、世界のワインづくりの現状など多岐にわたる話題を、ユーモアを交えて語っていただきました。
ワイナリーへの第一歩はぶどう栽培です。その難しさについて「まとまったぶどう栽培に適した土地を用意するのは大変なことです。買うにしても借用するにしても、その地域の人々との信頼関係が欠かせません。そして、信頼関係を築いていく上で何よりも大事なのは、ぶどうづくりやワインづくりに対する本人の熱い思いなのです。それが、人の心を動かすのです」と自身の過去を振り返って語ってくれました。最後に「熱意を持って本気で取り組んでほしい。私も要望があればいつでも相談に乗ります」と力強い言葉を参加者にかけました。
流通を見据えた戦略を
鹿取みゆきさんによる「日本ワインの現状と展望」の講演では、日本ワインの定義から生産の現状、海外との比較をはじめ、ワイン新興地の現状や新たにできたワイナリーの情報から、栽培品種の変遷、苗のクローンによる違い、苗の入手方法まで、かなり専門的な話にまで及びました。
その中で本場ヨーロッパと比べ、日本のワインづくりの多様性に触れた上で、「これから皆さんがワイナリーをつくるときに、どの品種でどうやって売り込んでいくのかが重要になってくると思います。どこでも栽培しているような品種で勝負をしていくのか?それとも、新しい品種を見つけ勝負をしていくのか?です」と、当初から流通を見据えた戦略を立てていく必要があると、現実的なアドバイス。
参加者は、具体的にワイナリーを起業したいと考えている方たちばかりだっただけあり、鹿取さんの貴重な話を熱心に聞き入り、メモを取る姿が見られました。
ガイダンスの最後には、6月から始まる講座の受講希望者を対象に面接の時間が設けられ、最終的な受講意志を確認し、応募者約70人の中から定員30人を上回る43人(前期23人、後期20人)を選抜。今年1年間かけて講座を開講していきます。
「ワイン生産アカデミー」はワイナリーを始めたい方にとって、ほんの入り口にすぎません。ワイナリーを開設するには、しっかりとした技術を取得し、土地を手に入れ、ぶどう栽培から始めると、おおよそ10年かかります。長野県では、ワイン生産アカデミーが覚悟と決意を持ってワイナリーを志す方の一助となればと考えています。10年後、20年後、長野県内にさらにたくさんの良質なワイナリーが増えていることを願い、ワイン生産アカデミーは来年度以降も開講していく予定です。