Vol.12 いよいよ栽培の集大成、ブドウの収穫です
収穫直前までの栽培管理、収穫の目安と判断
講師はVol.5でもブドウの栽培を教えていただいた、「ドメーヌ・オヤマダ」の小山田幸紀(おやまだ こうき)さんを山梨から再びお招きして、収穫についてお話をうかがいました。
収穫日を決定するには、ブドウの成分(糖度や酸度、phなど)が大切な要素となってきます。 サンプルの粒をランダムにとって化学的に分析したり、見た目や味から予測したり。さらに長年、栽培醸造に従事している方は、経験にもとづいて収穫日を決めていきます。
しかし、収穫予定日が雨予報の場合や、ブドウの病気が蔓延してしまった場合などは、収穫日を早めたり遅くしたりしなくてはいけない場合もあります。
自然が相手なので、適熟果にならなくても収穫するのは仕方のないことですし、ほかに育てている別品種のブドウの収穫予定もあるので、プレス機やタンクの空き状況など醸造施設のことも考えて収穫しなければなりません。
このように、判断目安はいくつもありますが、何度も書いている通り「良いワインは良いブドウから」。そのために、収穫のタイミングはとても重要です。 1年育ててきた集大成と言っても過言ではありません。
天候が良くない年もありますが、そういう年ほどできる限り良い状態のブドウを多く収穫できるよう、冷静に判断しなければいけませんね。
「アルカンヴィーニュ」の畑で実際に収穫
日を改め、今度は実際に収穫して学びます。
講師はヴィラデストワイナリー醸造責任者の小西 超(こにし とおる)さんと、「アルカンヴィーニュ」スタッフの皆さんです。
この日は、アルカンヴィーニュのすぐ下にある、標高900mと東御市で最も高地にあるブドウ畑のひとつで栽培されている「ゲヴェルツトラミネール」という品種のブドウを収穫しました。フランスのアルザス地方やドイツ、イタリア北東部など、比較的寒い地域で多く栽培されている品種です。
色は見ての通り灰色(グリ)ですが、白ワイン用の品種です。 ワインになるとライチや白い花など、非常に独特な香りのあるワインになります。 極甘口ワインの貴腐ワインに使われることもあります。
今年の晩夏は雨が多かったため、日照量が少ない年になりました。そのため病気が出てしまい、早めにブドウを収穫したので糖度が落ちてしまうなど、長野県内でも多くのワイナリーが頭を悩ませながら醸造する年になってしまいました。
ヴィラデストでも多聞に漏れず、品種によっては厳しいものもあったようですが、このゲヴェルツトラミネールはそれほど病気になった実もなく、健全な房が多かったです。
収穫を初めて経験した生徒さんはとくに感激した様子でしたが、何度も収穫を体験している自分もやはりうれしくて、ともに収穫を喜びあいました。
著者
成澤篤人
シニアソムリエ
1976年長野県坂城町出身。イタリアンレストラン「オステリア・ガット」ほか長野市内で3店舗を経営。NAGANO WINEを普及するための団体「NAGANO WINE応援団運営委員会」代表。故郷・坂城町にワイナリーをつくるため、2015年春からアルカンヴィーニュ内に設置された日本初の民間ワインアカデミー「千曲川ワインアカデミー」で第1期生として学びます。
日本ワイン農業研究所
アルカンヴィーニュ (ARC-EN-VIGNE)
「ARC」は「アーチ(弧)」を意味し、人と人をワインで繋ぐという寓意を込めています。フランス語で虹のことを「アルカンシエルARC-EN-CIEL」(空にかかるアーチ)といいますが、その「空CIEL」を「ブドウVIGNE」に代えて、名づけられました。ブドウ栽培とワイン醸造に関する情報を集積する、地域のワイン農業を支えるワイナリーとして、また、気軽に試飲や見学ができ、ワインとワインづくりについて楽しく学び、語り合うことができる拠点です。