白澤 卓二(しらさわ たくじ)
1958年神奈川県生まれ。医学博士。順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。日本ファンクショナルダイエット協会理事長。
日本アンチエイジングフード協会理事長。『長寿の里「高山村」長生きレシピ』(アスペクト)、『なぜ長寿の人は赤ワインを飲んでいるのか?』(メディアファクトリー)、『100歳までボケない101の方法』(文藝春秋)など著書多数。1958年神奈川県生まれ。医学博士。順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。日本ファンクショナルダイエット協会理事長。
日本アンチエイジングフード協会理事長。『長寿の里「高山村」長生きレシピ』(アスペクト)、『なぜ長寿の人は赤ワインを飲んでいるのか?』(メディアファクトリー)、『100歳までボケない101の方法』(文藝春秋)など著書多数。
Vol.2 教えて!長寿になるための赤ワインの飲み方
1.長寿の村にはワケがある…… 長野県高山村
2011年に長野県高山村で広島大学と共同研究を行い、無作為で選んだ60歳以上の村民24人の血液を調べたことがあります。その結果、22人の「テロメア」が平均を上回り、全体でも長い傾向を示しました。聞き慣れない言葉ですが、テロメアとは、老化と共に短くなる染色体のキャップのようなものです。逆に言えば、年を取っても長い人はまだまだ若く、長寿の可能性が高いということです。なぜ高山村の人たちはテロメアが長いのでしょう。要因は村の環境にあると考えています。
それは村に果樹園が多いこと。高齢者も山間地を上がり下りしながら果樹園で現役で働いており、運動が十分で生きがいも感じているように思われます。運動と生きがいは、健康長寿に欠かせないポイントですから、この村で暮らす人はエイジングケアの条件を備えていると言っていいでしょう。
食事も健康長寿に欠かせません。果樹栽培が盛んな高山村では、子どものころから毎日のようにりんごやぶどうを食べています。りんごに含まれるアップル・ポリフェノールは抗酸化作用があり、老化を抑制します。脂肪の蓄積を抑えて肥満や生活習慣病を防ぐ働きもあります。ぶどうには赤ワインと同様、レスベラトロールが含まれています。このシリーズ1回目でお話ししたように、レスベラトロールには長寿遺伝子をオンにする働きがあります。その結果、テロメアが短くならずに済んでいると考えられるのです。
ただし、テロメアの長さはこれだけで決まるわけではなく、喫煙や睡眠時間など生活習慣の影響も受けます。今後も高山村とテロメアの関係について詳しく分析していきますが、それにしても、赤ワインが健康に及ぼす効果にますます関心が高まる結果でした。
2.健康長寿のための赤ワインの飲み方5カ条
あなたは好きなお酒が決まっていますか?もし特にこだわりがないのでしたら、これからは健康に良いポリフェノールを豊富に含む赤ワインを選んではいかがでしょう。赤ワインは本来、ガブ飲みをするようなお酒ではなく、量のコントロールがしやすい点からもおすすめです。そして、以下に説明する5カ条の飲み方を守ってください。そうすれば、適正な飲酒習慣が身に付き、健康長寿の増進に役立つはずです。
① 1日の酒量は、ワイングラス3杯(270ml)までに止めましょう。
② 週に1日は、必ず休肝日を設けましょう。
③ 栄養バランスのいい料理と一緒に。ご飯、パンなど炭水化物は控えめに。
④ 食事をよく噛み、会話を楽しみながらゆっくり味わいましょう。
⑤ 夜9時以降は飲まない・食べないようにしましょう。
①は、医学的に定説とされている1日の適正アルコール摂取量30gから逆算したものです。ただし②にある通り、休肝日は必ず設けてください。夜勤のある日、運転をする日など、日課とからめて休肝日を決めると守りやすいはずです。
③と④は、カロリーの摂りすぎを防ぐための方法です。お酒を飲むときはカロリーの高い炭水化物は控え、肉、魚、乳製品などのたんぱく質と野菜を摂りましょう。また、よく噛んでゆっくり食べれば、腹七分目でも満足感が味わえます。あごをよく動かすことで脳の血流が増え、筋肉が収縮することで長寿遺伝子のスイッチもオンになります。
⑤はすでに健康の常識として広まっている通り。夜は代謝が落ちて体脂肪が蓄積されやすくなります。早めの夕食で夜更かしを避け、早起きして朝食・昼食をしっかり取りましょう。
3.お酒が苦手な人におすすめ 「ナガノパープル」
赤ワインは健康にいいと言いますが、飲めない場合はどうすればいいでしょう?確かに日本人はお酒に弱い人が少なくありません。アルコールを飲むと発生するアセトアルデヒドを分解する酵素、ALDH2を持たない人がいるのです。このALDH2、ヨーロッパ系の人種は誰もが持っている酵素ですが、アジア系の日本人や中国人は半数近くが持たないか、働きが弱いというデータもあるようです。
赤ワインのポリフェノールは、ぶどうの皮と種に含まれています。皮ごと食べればいいのですが、そうは言っても渋くて食べづらいもの。しかし諦めることはありません。近年出回るようになった「ナガノパープル」という品種は、一見すると巨峰のようですが、皮が食べやすく渋味も口に残りません。場合によっては1房でワイン1本分と同程度のポリフェノールを摂ることもできるのです。まだ新しい品種のため、生産量もそれほど多くありませんが、首都圏のスーパーなどにも出回り始めています。ぜひお試しください。