角りわ子さん|陶芸家

角りわ子さん|陶芸家

角りわ子さんは、米の産地として知られる東御市八重原の勘六山(かんろくやま)に工房を構え、その地の土を削り、器をつくりだします。薄くひかれたその器は、軽く丈夫で、どんな料理も美しく引き立てます。

食べること、飲めることの幸せ
そして器がつくれることが何より幸せ

角さんのつくる器は、卓越した技で薄くひかれ、手にすると驚くほど軽く、固く焼きしまっているので丈夫です。「台所に立つ女性が使いやすいように」と、重ねてもかさばらず、出し入れしやすい。和洋どんな料理を盛りつけても様になり、料理研究家の愛用者が多いというのもうなずけます。

角さんがかつてアシスタントを務め、「勘六山房」を主宰した作家の故水上勉氏は、角さんの器を「形も色も独自で一見して洋風な線描画も陶のもつ東洋の地風を滲み出していて、まことの味が深い」と言い表しました。誰よりも水上氏が角さんの器のファンだったようです。

角さんは、2年前に乳がんの全摘出手術を受け、その後1年をかけて抗がん治療を受けました。すっかり完治した今では「毎日を大切に集中して生きようって思える。病気になってよかった」と、やわらかな笑顔で言ってのけます。

発症以前は、根を詰めて夜中まで作業に没頭することもあったけれど、今では生活習慣を朝型に変え、夕食後はなるべく仕事をしないと決めています。食生活も改め、地元産の玄米や野菜を意識してとるようになったといいます。

お酒は「昔も今も、飲むならワイン」。理由は「ポリフェノールとか、身体に良さそうだから」。そして今は何より「飲めるだけで幸せ」とのこと。1日1日、1食1食がとにかくありがたく、大切に思えるようになった今では、器への思いも深まりました。

「例えばお茶を飲めるのはこれで最後かもしれないと思うと、この器がすごく大事になる。だから今まで以上に、器ひとつずつに向き合っていきたいと思います」

必要な分量の土だけ板にのせてひく「一個引き」は、土が無駄にならない。「タイでもこうやってた。京都ではひと山からひく。薄くつくりたいとこうなるかも」
細かな彩色が施された陶板。「こういう細かい作業が大好き」と角さん
角さんの器づくりに欠かせない、手に馴染んだ道具の数々
ルビーとニッキ、新たな家族が増えた。もう1匹は足元に
角 りわ子
すみ りわこ

1961年鳥取県境港市生まれ。84年同志社大学文学部美学芸術学専攻卒業後、87〜88年京都市工業試験場にて学ぶ。88〜92年京都西山窯にて修業を積み、92〜93年技術指導のためタイへ渡る。帰国後、東御市(旧北御牧村)に作家の故 水上勉氏が構えた「勘六山房」にて氏のアシスタントを務めつつ、現地の土を陶土として作陶を始める。

作品を購入できる場所

わざわざ

住所|長野県東御市御牧原2887-1

電話|0268-67-3135

http://www.waza2.com

取材・文|塚田結子  写真|平松マキ
2013年08月30日掲載